マリンワールド海の中道様
九州最大の水族館「マリンワールド海の中道」の開館35周年を記念して制作した謎解き作品。オープニングスタッフへのヒアリングや過去の記念誌等のアーカイブの読み込みで、これまでの歩みについての理解を深め、さまざまなエピソードを謎解きに落とし込みました。自宅でも楽しめる謎解きキットの「過去編」と、現地周遊型の「現代編」の2部作として制作し、物語が交差する立体的な施策になりました。
企画制作、会場設営、販促、広報
水族館というアミューズメント施設は、ほとんどの人が一生のうち3回程度しか訪れないと言われています。そのぶん、人々の人生の節目に寄り添えるわけですが、営業部の方々としては、どのように積極的な来館を促していくかということが大きな課題になっていると言います。
そこで、同館を舞台としたリアルな姿と歴史を物語に落とし込んだ作品で、来館者の方々に”新しい体験”をしていただけるユニークな作品づくりを行うことになりました。
折しも同館が間もなく開館から35周年を迎えるということで、これまでの同館の歩みや歴史を伝えられる”エモい物語体験”をコンセプトとした作品を作ることになりました。
35年という年月は、ちょうど開館当初には子どもだったお客様が、今では大人になり自分自身も子を持つ親になっているような時間です。そこで、本作では親子二代、三代で参加いただき「親にとってはエモい、子にとっては新しい」水族館の今と昔の姿を感じてもらえるような作品を目指すことになりました。
制作当初はひとつの作品として公開する予定でしたが、35年もの歴史を持つ水族館の今と昔を全て落とし込もうと思うと、どうしても各時代のエピソードが薄くなり、簡単にしか扱えなくなってしまうという課題に直面しました。
そこで、ひとつの作品を「過去編」と「現代編」の二つに分け、それぞれの時代をテーマとしたシリーズ作品とすることでそれぞれの時代の魅力を存分に盛り込み、また物語の視点を分けることでスタッフサイドとお客様サイドの両方の想いや記憶を表現できるような作品にしました。
「35年目の約束」と題したこの作品は、過去編の主人公である同館のオープニングスタッフが、ヒロインの少女と交わした約束を果たし、現代編で大人になった少女がこの約束にまつわる謎の手紙を受け取るところから始まるというシナリオ構成になっています。二つの作品の物語が視点と時代を変えクロスオーバーするのです。
当初は物語体験としての体験価値を高めるために作品を二つに分けたものの、実際に制作を進めるとビジネス的な観点でもさまざまなメリットがあることが見えてきました。
まず、現代編は現在の展示をしっかりと見ていただくためにスタンプラリーのように館内の手がかりを集めながら謎を解き明かしていく「現地周遊型」の作品にしました。これにより、地元の人々が来館するきっかけになるとともに、年間パスポートを持っているようなコアなファンの方にとっては新たな体験価値と満足度の向上につながりました。
一方で、過去の姿やこれまでの歩みを描いた過去編は「持ち帰り型」の謎解きキットにすることで、オンラインショップなどでも販売でき全国の人々に同館を知っていただくきっかけになったのです。謎解きのコンセプトも、謎を解いていく中で水族館を作っていくコンセプトで、建物を部分的に段階を分けて建築していった同館の歴史ともマッチし、また水族館ファンと謎解きファンの両方に”刺さる”作品となりました。
現地に足を運ぶ誘引となる現代編、全国の人々の目に触れ、新たな収益の柱として機能した過去編という形で立体的な施策が実現できたのです。
過去編のテーマはこれまでの歴史を表現することだったので、記念誌などを読み込み同館で起こったさまざまな出来事やエピソードを洗い出し、整理していきました。
同館は建物自体が段階的に”進化”してきた珍しい水族館です。オープン当初は現在の半分の姿で建設され、その後グランドオープンのタイミングで全館が建設されました。(これらの期間を同館ではそれぞれⅠ期、Ⅱ期と呼んでいます)
この珍しい進化の軌跡を謎解きで表現するために謎解きの基本構成が構想されていきました。
このように水族館のハード面(設備、建造物)としての進化と、ソフト面(展示内容やコンセプト)としての進化を、それぞれ謎解きの用紙やギミックで表現していきました。一枚の謎が二枚目の謎が加わることによってルールが変化したり、展示内容が変わったことで迷路の内容が変わって新たな答えが出たりと、”解き直し”といった手法もふんだんに盛り込んだ構成を作り上げていきました。
現代編では、現在の水族館の姿を楽しんでもらうために現地周遊型の形式を選択しました。だからこそ、各所に設置された手がかりのパネルを参照するだけの「どこでもできる」作品にはしたくないと考えていました。(もちろん、目的によってはそういう形式の作品が望ましいこともあります)
水族館で実際に展示されている生き物たちの情報を使ったり、あまりお客様が訪れないようなエリアにある解説の展示を見に行ったり、その場所に行かなければできないことをきちんと盛り込むことで、「この場所を最大限楽しんでもらう」という体験価値を創出したのです。せっかくこだわって作った解説の展示があまり見てもらえない、なんていうアミューズメント施設やイベント会場にありがちな過疎・過密エリアの問題解消にも寄与したと言えます。
特に、謎解きの最後(大謎と呼ばれる最大の難問)はまさに”この場所でなければできない”が実現できたと自負しています。ネタバレになってしまうので詳しくは言えませんが、もし近くを訪れたときにはぜひ体験していただきたいと思います。
シリーズ全体を通した本作のテーマは”エモい物語体験”です。そのために必要不可欠だったのは、上質なシナリオだけではなく、やわらかでノスタルジックなデザインとイラストでした。
全体的に水彩のような風合いで、心が温かくなるようなイラストを作成し、映像化することで、LINEを使った自動のシナリオ進行であるにも関わらず味気ない体験機会になることを避け、謎解きを終えたあとに一本の映画を鑑賞したような”読後感”を実現することができました。
水族館のオープニングスタッフとして働く主人公が一人の純粋な少女と出会い、彼女と交わした”ある約束”を果たそうと奮闘する。そして、大人になった少女が”あの日の約束”を思い出していく…。
記憶を紐解くように謎を解き明かしていく中で自然と登場人物に感情移入し、高い没入感を実現することが顧客満足度の最大化と「ファン形成」につながったのです。
TERRA NOVAでは、クライアント様から受注した作品の制作に全力を注ぐことはもちろん、その作品をより多くの人に届けることも最重要課題のひとつだと考えています。
しかしながら、そのための広報や販売促進、販路拡大といった作業をクライアント様だけで推進するのはなかなかに大変なことであるということも事実です。さまざまな業務で忙しい企画担当者の方が自分でプレスリリースの原稿を書くだけでも大変、というのが正直な本音だと思います。
本作でも、プレスリリースや公式ホームページでのお知らせの原稿作成をはじめ、さまざまなオンラインショップでの販売交渉や在庫管理、また現地のショップでの販促ポップの納品や実際の売り子業務など、さまざまな形でサポートさせていただきました。専用のPVも作成し、九州の主要駅のデジタルサイネージ等で放映したことも集客の最大化に寄与したと言えるでしょう。
プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000069223.html
公式ホームページでのお知らせ:https://marine-world.jp/whats-new/events/event_67/
謎解きだからこそ伝えられた水族館の35年の歴史と魅力
九州最大の水族館「マリンワールド海の中道」の開館35周年記念イベントとしてオリジナルの謎解きを製作。その企画から開催までのリアルな声をお伺いしました。
1 謎解きを通して水族館からのメッセージを伝えたかった
2 マリンワールド35年の歴史を振り返る謎解き作品に
3 TERRA NOVAに依頼した決め手は担当者の人柄
4 担当者の事業理解度の深さと手厚いサポートに満足
5 LINE連携や動画コンテンツも盛り込み、幅広い層が楽しめる
6 TERRA NOVAならではの視点で水族館の魅力が伝わる内容になった
7 水族館に来る機会が少ない方々にもアピールできる