戸田市様(埼玉県)
埼玉県戸田市にて、SDGsの目標達成に向けたアクションについてより多くの方に知ってもらうことを目的とした「地域周遊型」のリアル謎解きイベント開催しました。子どもから大人まで幅広い人々が参加できる謎解きイベントとしたことで、市が抱える課題解決に資する自治体連携の事例となりました。
企画制作、運営支援、広報
埼玉県戸田市は、SDGs未来都市として、持続可能な「みんな輝く未来共創のまち」の実現を目指している市です。SDGs(持続可能な開発目標)について市民ひとりひとりが認知、理解したうえで自分ごと化した生活を送るようになることを目標の一つとしています。
市が令和3年度に実施した意識調査にて、市民の約3人に2人がSDGsを「認知している」と答えました。これは、市民の間にSDGsの考え方が広がりつつある一方で、約3分の1の人々がまだこの目標について十分に認知していないとも捉えることができます。また、SDGs自体は認知していたとしても、その目標の達成に向けて自分自身がどのような生活を送ったらよいのか、といった具体的なアクションについては十分にイメージできていない、といった人も多いと予想されており、継続的なSDGsの周知とともに、具体的な取り組みについても啓発を行っていく必要があると考えられていました。
そこで、市民が自ら意欲的に参加し、楽しみながらこれらの問題や具体的な取り組みについて知ってもらう啓発イベントの手段として謎解きイベントを開催することとなったのです。
今回のイベントでは、SDGsについてしっかりと知ってもらうことが最重要課題であったため、一部の目標だけを抜粋した内容ではなく、17の目標すべてを取り扱いたいというオーダーでした。
地域周遊型の謎解きイベントにおける問題数は5~10問程度(小問)が一般的というなかで、最低でも17問という問題数は一つのイベントとしては盛りだくさんのボリュームだといえます。問題数が増えれば増えるほど、参加者の疲れや集中力の低下を招き、最後まで到達できない、離脱してしまう参加者が多くなることが想定されました。
そのため、問題の難易度調整に多くの時間を費やし、ターゲットとなる年齢層の子ども達に繰り返し謎を解いてもらいながら全体ボリュームの調整を行いました。一問一問に時間をかけずに解けるものの、ただの作業や一目で解けてしまう謎ではなく、またヒラメキの楽しさを残したうえで最重要課題であるSDGsのテーマを表現した謎を作ることに注力したのです。
以下の例題は「目標2:飢餓をゼロに」をテーマに、フードロス削減の具体的なアクションとしての「手前取り」を疑似体験することをイメージして制作された謎です。難易度とボリューム、ヒラメキと啓発のバランスが取れた謎になっています。
また、ボリュームの多いコンテンツでも飽きることがないように、世界観やストーリーにもしっかりと楽しさを盛り込みました。参加者は、ある日突然無人島で目覚めた主人公として、4つの島で起こっている困りごとを解決しながら元の世界への帰還を目指します。個性豊かな島のリーダーたちからのミッションをクリアしながらストーリーを進めていくRPG的な設定で、自らが物語を進めていくことで飽きのこない設計になっています。また、それぞれのリーダーから認められるとLINEでその島の「バッジ」がもらえ、達成感を感じながら謎を解き進めることができるとともにすべてのバッジを集めることがイベント完遂の原動力にもなるようにしました。
物語に登場する島々を”小さな世界”に見立て、世界が一体となることで最後の難題を解決することができるストーリー展開で、SDGsで実現したい社会を表現しました。
今回の企画の所管課である共創企画課では、行政側の考えだけではなく市民の声が反映された施策を推進できるよう、市民や市内の事業者とともに企画を作り上げることを重要視しています。そのため、謎解きのなかで取り扱うアクションや企業としての取り組みについては、こうした人々の声を拾いながら作り上げていくことが求められていました。
そこで、まずは企画設計の段階で、政策共創プラットフォームのサービスを使って一般の方々から広くアイデアを募集したり、戸田市内でSDGsに資する取り組みを行う「とだSDGsパートナー」の企業・団体に対して、それぞれがどのような取り組みを行っているのかを詳細にヒアリングしたりしました。
これにより、より一般の人々が実践しやすい意見を集めることができ、最終的なアウトプットとしても納得感があり、今日から実践できるアクションを知ってもらうことができました。
今回のイベントでは、地域周遊型のモデルを採用するため、戸田市内のさまざまな公共施設を巡ってもらう設計にすることになりました。戸田市民にとっては自分が暮らす市の魅力の再発見につながり、戸田市外からやってきた人にとっては新しくこの市の魅力を知るきっかけになるというものです。
こうした施設に協力を仰ぐにあたって、施設内の設営やスタッフのオペレーションについてはできる限り負担のかからない設計にする必要がありました。設営図面とともに繰り返し設置物の検討を行い、簡単に設置ができるように、破損・汚損の可能性を最小限に抑えられるように、施設職員の手をかけずとも長期間の運営が可能なように、といった点をさまざまな角度から綿密に検討し、運営マニュアルに落とし込みました。
また、正誤判定やヒント出しなどはスタッフの手がかからないようコミュニケーションアプリの「LINE」を使って自動化。オペレーションが発生しないようなイベント設計を行いました。
SDGsが目指しているのは「誰一人取り残さない」社会の実現です。当然、SDGsの啓発を目的とした本イベント自体もこの考え方に合致している必要があります。そのため、謎を作るうえでもさまざまな条件の人々が参加することを前提に制作を行う必要がありました。
謎解きイベントでは「色」を手がかりにした謎がよく出題されます。しかし、参加者の中には色覚に課題を抱えた方も参加されるかもしれません。今回のイベントではそういった方でも問題なく楽しめるイベント設計にすることが求められていました。そこでLINEを使って、謎解きに必要な色情報を文字として確認できるような仕組みを実現し、正しく色を識別できなくても十分に楽しむことのできる設計にしました。
また謎解きを進めていく中で、SDGsに関連する語でもある「partner」という英単語が謎の解答となる箇所があります。しかし英語をまだ習得していない方には前提知識が不足しているため解くのが難しく、これは「ヒラメキで答えを導く」という謎解き本来の趣旨からも外れてしまいます。
そこで問題冊子の前段部分に、「partner」の単語を含むSDGs学習ページを混ぜておき、しっかりと問題用紙を読み進めていくことで答えが導けるよう調整しました。
このように、今回の謎解きイベント自体が「誰ひとり取り残さない」というSDGsのキーワードを体現したものにすることを意識して企画・制作を行ったのです。
本イベントでは、参加者全員にオリジナルのボールペンを配布しました。そのボールペンのボディ部分に使用されているのは「Green Planet®」という特殊な環境配慮素材。この素材は、日本で唯一”海のなかでも分解される”生分解性プラスチックで、水温が低く微生物の働きが少ない海という特殊な環境でもしっかりと分解されることが確認されています。
近年世界的な問題となっている海洋プラスチックの問題の解決に資する次世代の素材として注目を集めているこの素材は株式会社カネカ様の製品で、本イベントのために特別にオリジナルのボールペンを製造いただきました。
本イベントで学んだことを日常生活の中で活かしていただくための重要な取り組みの一つとなりました。
※画像はイメージです。実際の製品とはデザイン・形状が異なります。
※「Green Planet®」は株式会社カネカの登録商標です。
イベントの詳細情報:https://www.city.toda.saitama.jp/koho-toda/231101/tokusyu01.html
プレスリリース:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000017.000069223.html