一般社団法人須坂青年会議所様
小学生が少子化問題の解決に向け、町全体を舞台としたリアル謎解きイベントを企画。教育現場の枠を超え、青年会議所や地域おこし協力隊も巻き込んだ企画の実現をお手伝いさせていただきました。発起人の須坂市立森上小学校の児童の皆さん、担任の原先生、一般社団法人須坂青年会議所の藤原理事長(2024年度)に、イベントの企画から実現までのお話を伺いました。
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―今回のイベントを企画した背景を教えてください。
原先生:きっかけは、発起人である6年生の児童が5年生のはじめの時に、新1年生が1クラスになったのを知ったことです。それまで2クラスあったのが1クラスになったことで、いよいよ『少子化』という問題が自分たちの身近に迫ってきているのだと感じるようになりました。そこから総合的学習の時間を使って、少子化や過疎化という問題について本格的に学び始めたんです。1年間かけて少子化問題と向き合い、「自分たちに何ができるか」を話し合いました。
児童:最初は少子化について、皆さんに楽しく知ってもらうためにはどうすればいいかを考えました。謎解きに絞らずにさまざまな案を出し合った後に、どの案がよいかアンケートを取った結果、謎解きイベントを実施することに決まりました。
原先生:実は、企画を考える際には謎解き以外にもたくさんのアイデアがあったんです。「名物を作る」「歌とダンスでPRする」など、本当にたくさんのアイデアが出た中で、通年通して提供できるものか、子どもから大人まで幅広い人が楽しめるものか、経済的な実現性があるかなど、いくつかの基準を設けて話し合い、総合的なポイントが最も高かった謎解きイベントに決定しました。
その後子どもたちが考えた謎解きストーリーを見た時に、その完成度の高さに鳥肌が立ちましたね。これはなんとしても実現しなければという思いが高まり、元々親交のあった須坂青年会議所の藤原理事長に相談しました。
藤原理事長:私たちは、青年の力で地域課題を解決し、地域を明るく豊かにすることを目指しているので、このお話を聞いたときには、私たちの理念にも沿う素晴らしい企画だと感じ、一緒に進めることにしました。私自身は、子どもたちからのプレゼンを直接聞いていたので、とても温度感も高まり、前向きに進めていきたいと思っていたのですが、実は青年会議所の他のメンバーからは、イベントの実現性について懸念の声も上がっていました。メンバーは多種多様な活動をしているのですが、企業の皆さんから協賛金を集めることは容易ではないことをよく知っていて、また本イベント実現のためには一定の金額を集めなければならないことから、そういった反応ももっともだと感じました。ただ、直接プレゼンを聞いて子どもたちの強い想いを間近で感じた私としては、このイベントは絶対に成功すると確信していましたし、何とかして形にしたいと思っていましたから、各所に働きかけて関係者のコンセンサスを取っていきました。
原先生:最初は自分たちで準備を進め始めたのですが、いざ「謎を考えよう」となった時に、謎の組み立て方や仕掛けがわからず行き詰まってしまったんです。そもそも、町を舞台としたイベントというのもいまいちイメージがわかなくて。そこで、私が企画書を作り10社ほどの謎解き制作会社へアプローチしました。その中の1社が、TERRA NOVAさんでした。
―TERRA NOVAに依頼した決め手はなんでしたか?
原先生:もともと、TERRA NOVAさんが遊びと学びを掛け合わせた、エデュテイメントの企画に力を入れていらっしゃるのは知ったうえで問い合わせをさせていただいたのですが、お渡しした企画書を見て、こちらが意図していることや企画のポイントだと思っていることを見抜いたうえで、「一緒にやったら面白くなります」と熱心に提案してくれたんです。感覚を共有できることが一番重要だと思い、TERRA NOVAさんに依頼することにしました。
―TERRA NOVAの出張ワークショップはいかがでしたか?
原先生:いざ謎解きについての企画をご一緒いただくということになったときに、最初に学校でワークショップをしていただいたんです。謎解きの考え方や作り方はもちろん、子どもたちがその時点までに考えたことを踏まえて、ここから先どんなことを詰めていけばよいのか、どんなことを依頼すればよいのかを整理して教えてくれたので、子どもたちにとっても、自分たちの役割やタスクが明確になり、当事者意識が高まったなと感じました。夏休みの直前だったので一部は夏休みの宿題にしたのですが、自分たちで予定を合わせて、夏休み中にリモート会議を開いて作業を進めている児童もいました。
―参加者の反応はいかがでしたか?
児童:当日は、みんなで受付係や景品係、ステージ進行係などを担当しました。参加者の人たちが楽しそうに謎解きに挑戦しながら、「須坂市ってこんなに人口が減っているんだ」と改めて知る場面も見ることができたので、頑張って準備してよかったです。
藤原理事長:実は、私自身が謎解きが大好きなこともあって、正直難易度的には物足りないのではないかと危惧していたんです。原先生は、このままの難易度でよいのではないかと仰っていたのですが、担当者の方へ相談したところ、折衷案を提案してくれました。それまでの問題に加えて、冊子を使ったギミックのある新たな謎を作成してくれたんです。おかげで子どもだけではなく大人の方にも満足いただけるイベントに仕上がったと感じています。
―企画の進行で大変なことはありましたか?
原先生:途中から子どもたちの少子化問題に関する調査に熱が入り、参加者に伝えたい情報がどんどん増えていきました。しかし、参加者からすると長文で説明されても説教くさく感じたり、理解しづらくなったりしてしまうのではないかと感じていたんです。担当者の方に相談したところ、文章ではなくスライド動画で伝えたらどうかというアイデアをいただき、見事に解決しました。謎解きイベントの満足度を担保するという観点はもちろんのこと、子どもたちの熱い想いも汲み取った提案に感謝しています。
―子どもたちの学習要素としてはいかがでしたか?
原先生:何かを学ぶ時、楽しさがなく正論だけを述べられても伝わらないですよね。僕が日ごろ意識しているゲーミフィケーションに近い考え方ですが、エデュテイメントと親和性の高い謎解きは「学ぶことって楽しい」が叶うんです。自力で学べるようになったり、学び方をスキルアップしたりするのに効果的です。全国の小学校で総合的な学習のトレンドになる予感がしています。
しかも今回の事例では、子どもたちが謎解きに参加するだけではなく企画する側も経験したことで、ただ楽しむだけではなく、自分たちで何かを作り上げることや課題解決の基本を学ぶことができたと思います。学ぶことは楽しいことであるという気づき、物事を進めるために何をしなければならないかを考える力、プロジェクトを成功させるうえで解決していかなければならない課題や自分自身への向き合い方など、謎解きイベントを企画する中でさまざまなことを学べるという観点でも、総合的な学習の題材として非常に有意義であると感じています。
このプロジェクトを通じて子どもたちが、自分たちが伝えたいことを自分たちの言葉で人に伝える能力も飛躍的に高まったと感じます。
藤原理事長:このインタビューの受け答えも素晴らしいですもんね(笑)
―地域を巻き込んだ謎解き企画はいかがでしたか?
藤原理事長:子どもたちの奮闘もあり、おかげさまで協賛・協力企業がどんどん増えたのですが、その分、告知物の制作や企画の調整など、やるべきことも増えていきました。そんな時も、担当者の方が各企業との連絡やデザインの調整などもサポートしてくださり、本当に助かりました。地域課題と向き合い、その解決を目指すことは容易ではありませんが、謎解きという親しみやすくて楽しいイベントだからこそ、少子化問題に対する当事者意識をもってもらい、また須坂市の魅力を伝えることができたと思います。
子どもたちが想いと熱意をもって行動すれば、多くの方が協力してくれるという経験をしたということは、この町の将来のリーダーを育んでいくという意味でも非常に意味が大きかったのではないかと思います。
―今回、TERRA NOVAに依頼をして期待以上だと感じた点はありましたか?
藤原理事長:限られた予算の中で、常にクオリティ高めてくださいました。イベント直前はグループLINEが24時間動いているような状態でしたが、担当者の方のレスポンスも早くて。その姿を見て、チームの一人一人が全力を尽くしているのを感じ、自分自身も大変な時期を乗り越えるエネルギーをもらうことができました。
原先生:アンケートの選択肢からイベント全体の課題まで、どんなことも的確に答えていただけましたね。ひとつ課題を相談すると2〜3個の解決案がすぐ挙がり、提案力の高さや引き出しの多さに感激しました。担当者の方とのコミュニケーションもシンプルに楽しくて、今後もご一緒できたらいいなと思っています。